私はセーラームーンになれない。

80's産トランスジェンダーの備忘録

おっさんずラブとは何だったのか(中)

えー
 
前回に引き続き「おっさんずラブ」通称「OL」についての所見、感想まとめ記事の続きです。
 
 

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中編では上編に続き主要登場人物の紹介と感想を交えて雑記していきます。
 
※こちらが上編です
 
※極めて個人的、主観的な感想に基づく記事ですのでご期待に添えなかった場合は申し訳ありません。
 
 

 

 

 
 
そして遅まきながらOLおめでとう・・・・!!!!!
 
 
 
 
 
 
 

おっさんずラブ主要登場人物まとめ②

 
 

◼武川政宗(たけかわ まさむね)

 
・牧に未練タラタラな足ドンクール眼鏡上司
 

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本作において春田を巡る三角関係に色を添える、というかその相関図に明確に加わってくるのが眞島秀和演じる武川主任」(※以下武川)である。
 
先に明記しておくと、武川は牧の元カレである。
 
そうして改めて見ると一つの会社の中に「元カレ、今カレ」が混在している天空不動産のヤバさというか何というか、敢えて先進性とでも言おうか、その辺りに若干の笑いを禁じ得ないが、そこはフィクションとしてスルーしておきたい部分である。
 
武川の馴れ初めは、牧のOB訪問に端を発する。
 
武川の服務理念を目にした牧がその熱いメッセージに惚れて(この段階ではそういう意味での"惚れた"は無かったと思われる)OB訪問にやって来た、というのが彼らの出会いの物語である。
 
これもある種滅茶苦茶ベタな展開で、もう簡単にスピンオフが今すぐ作れるレベルの関係性とストーリーだが、武川主任と牧がその後どの様にして付き合うに至ったのかは武牧(武)勢としては映像化悲願と言った所ではないだろうか。
 
武川という男は非常に「エロい」。
 
私は眞島秀和という俳優を恥ずかしながら認識していなかったのだが、見れば見るほど彼の「BL作品との親和性」は凄まじいものがあるな、と思う。
 
クールメガネ属性…しかしその実別れた今も牧にベタ惚れ、何なら俺はアイツじゃなきゃ駄目なんだ」と言わしめ春田に対し土下座までキメる程未だ牧への想いを捨て切れぬ想いの深さも凄いが、やはりここでも凄いと思わざるを得ないのは牧という男の蠱惑ぶり…というか、魔性、みたいな点だろう。
 
どこまで男をオトす能力に恵まれているのか、世の女子は白旗モノである。
 
武川主任が一体どの属性に位置するのか、少々疑問というか曖昧ではあったが、彼が牧にあっち側の人間に恋をしても辛いだけだぞ」と言っている事から、武川は恐らくストレートバイセクシャルではなく、牧同様ゲイ同性愛者という設定なのだろう。
(※かつて春田が武川の結婚観を聞かされた際にも非常に結婚というものに対し否定的であった。特別な理由もなくそこまで婚姻制度を忌避するという態度の表れはクローゼットな同性愛者の用いる回答としては割に一般的ではる。そしてそういう部分を鑑みるとそれ即ち彼が同性愛者であったがゆえの回答、という見方も出来る)
 
それがいつからなのかまでは不明だが、少なくとも春田の様に牧が初めて付き合った男(の恋人)」というニュアンスとは異なるメッセージを汲み取れる。
牧に出会うより以前から同性愛者だったのだろう。
 
それを考えると牧の嗅覚の様なものにまである種の面妖さを感じずにはいられないが、そこもまた設定として流しておきたい部分である。
 
武川主任は回を増す事に所謂二次キャラの属性としてありがちなクレイジーサイコホモ」の側面を強めていくが、しかし武川が春田や牧にもたらしたものも非常に大きい。
 
見返していると、諦めたいのか掻き回したいのかどっちなんだ、という気もしてくるが、牧を大好きなのだから、その行動が突飛なものになってしまうのも頷ける。
 
武川が物語に深く介入し始める辺り、始めは春田に対し一見恋心…?の様な素振りを見せるが、それは結局牧と同棲している(しかもキスした事も知っている)春田に対する嫉妬から来る行動嫌がらせだった、という事が判明する。
 
そう考えると何とも鬱陶しい上司ではある。
 
しかし武川も最終的には春田に対し「手を引いてくれ」と土下座しながら懇願する。
 
それ程までに牧を想っているのだ。
 
公私混同し過ぎな会社であり、その事を思うと何とも春田が不憫というか、よくトラウマになって退社しなかったな…という感じだが、その武川の想いの丈を聞いても尚、春田は結局牧を諦められない
直前に起きた件の「玄関先で裸でBH(バックハグ)」事件だが何が何だか俺にも分からねえがお前を行かせたくなかった」と春田に言わしめる辺り、この点を鑑みても牧の魔性ぶりを再確認する想いである。
 
しかし中盤から完全に横恋慕、恋敵といった邪魔ばかりしてくるキャラクターとして描かれる武川だが、最終話で春田と牧を結び付けるに至る決定的なアクションを起こし功労者でもある。
 
牧の事が大好きという想いは未だ変わらぬまま、最終話で部長と春田の結婚を黙視しようとしていた牧の心を奮い立たせたのは他でも無い武川である。
 
武川は牧だけでなく、春田にも問う。
「部長の事を本当に好きなのか?」
 
春田は自身の想いを黙殺しながら「好きですよ!」と半ば投げやりに答える。
それを寝た振りをしながら聞いている部長…
 
という何とも涙ぐましい一幕である。
 
武川だけでなくちづの強い後押しもあって、牧は蓋をしていた自分の想いを春田に告げる事を決める。
 
本当に最終話では部長を除き、ちづと武川がMVPだと思うのだが、OLは徹頭徹尾嫌なキャラ」がいない
嫌いなキャラが存在しないというのはどんな媒体であれ人気作品におけるキーワードでもある
 
ちづにも武川にも、勿論部長にもハッピーエンドを迎えて貰いたい、と切に願わざるを得ない破格の良い人ぶりを見せつけた2人だが、その甲斐あって、すったもんだの末春田と牧は遅まきながら結ばれる。
無論、部長の功績も大きい(というより、純粋に泣ける)。
 
その後エピローグで語り合う武川と部長の何ともアダルティな会話のやり取りがまたニクい。
 
会話の中で一瞬部長が武川の手に自身の手を添えるシーンが出てくるが、その後部長は冗談めかして笑う。
何とも大人っぽいシニカルなやり取りである。
 
武川も何だかんだで牧を諦めきれない自分に歯痒さを感じていただろうし、しかし同時に牧には幸せになってもらいたいという想いの中で揺れ動いていただろう。
 
OLが人の手で語られる時、よく目にするのが人を好きになるということ」という一文である。
 
我々視聴者はその一文、即ち「人を好きになるということ」というメッセージが示す通り、彼らが全力で体現してくれた誰かを愛するという事」ひいてはそれが「性別関係無く」という点に、結局の所揺さぶられ、目が離せなくなったのだと思う。
 
男女モノの恋愛ドラマはある種予定調和、と前回のエントリで記述した様に人を好きになるということ」という事について真正面から向き合って、考えて、悩んで、そして答えを出した、というたった7話の内に詰め込まれた人間模様に我々はストレートに心を打たれたのだ。
 
その辺の葛藤は春田の決まり文句である「何なんだ!!」で始まる彼の一連のモノローグに集約されている。
 
中でも特に牧に対する「男だから駄目なのか?」という彼の人と向き合う際の真剣さ、誠実さは時に優しさという刃で傷付ける事もあるが、それでも実直かつ真摯な姿勢は素直に見る者の心を打った筈だ。
 
「人を好きになるということ」とは一体何なのか。
それは人類不変のテーマであり、また今世紀において我々が再確認しなければならない根源的なテーマでもあると思う。
 
当たり前の様に男は女を、女は男を好きにならなければならない、という楔に杭を打つ、という意味でも、OLは単なるコメディドラマ以上の役割と、同時にメッセージ性を持つ作品だったと思う。
 
同時にセクシュアルマイノリティの当事者達にとってもセンセーショナルだったのではないだろうか。
 
彼らは彼らで、実は非常に生々しい、リアルな世界の中で恋愛をしている。
 
OLの様にピュアなラブストーリーは実はそうそうない。
 
何なら、マジョリティ以上にその世界の恋愛というのは非常にドライで、また予定調和的だ。
 
私の知る限りは少なくともそうである。
 
そう、彼らも彼らで、決められた世界とルールの中で、男女の恋愛同様、非常にリアリスティックな恋愛を行っているのである。
 
OLは徹頭徹尾ファンタジーだとは思う。
 
しかし我々は、男女のみならず、異性、両性、同性愛の枠を超えて、いつだって、何歳でも「真剣な恋愛」を求めているのではないか。
 
予定調和でも打算的でも無い、自身の本質に差し迫る様な純愛を、我々は真実の所求めている筈だ。
 
そのテーマを、臆す事無く体当たりで演じきってくれたOLという作品の純粋な恋愛模様に、男とか女とか抜きにして、私達は惹かれたんじゃないだろうか。
 
私は、少なくともそう思う。
 
「人を好きになるということ」
それについて恐らく、誰だって真剣に考えたいし、そういう恋をいくつになってもしたいのだと思う。
 
そういう意味で、全く別ベクトルから普遍的なテーマを再現し、再認識させてくれた本作は、単なるBLの枠を超えた何かが確実にあったと言わざるを得ない。
 
 

◼黒澤蝶子(くろさわ ちょうこ)

 
・旦那を男に盗られたサバサバ系人妻
 

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黒澤蝶子(※以下蝶子)黒澤武蔵、つまり部長の妻である。
 
物語の導入、春田に対する部長の告白と並行して物語に本格的に介入してくるキャラクターだ。
 
部長のうわごと、また「はるたん」という春田に対するニックネームから蝶子は夫に対し疑惑の眼差しを向ける。
無論、対女性の影、つまり女との不倫を疑い始める。
 
黒澤夫妻×春田のエピソードは根本的にコメディだが、真剣に蝶子さんの立場に立って改めて考えてみると何とも力の抜ける、というか、怒ればいいのか笑えばいいのか分からない事案である。
 
ちづの項目でも触れたが、BLに出てくる女性というのは極めて物分りが良い」
 
これは「男性同士」という、女性がもうどうやっても介入出来ない恋愛なので、半ば諦観するしかない、という背景や心情もあるにはあるだろう。
 
しかし蝶子の場合はケースがケースである。
 
黒澤武蔵、即ち部長は既婚者である。
 
夫が男と不倫している、という事を知ってしまった場合、世の中の奥方は一体どうするだろうか。
 
私なら想像もつかない。
 
いや、むしろ逆に今の時代だからこそ、男とか女とか無関係に、冷静に単なる「不倫相手」として相手方の男を訴える先進的…というか理性的な女性もいるだろう。
 
そして現代では、恐らく不倫相手が男だろうが、証拠さえ揃えばきちんと「夫の不貞」として裁判沙汰に持っていける筈だ。
 
しかし彼女、蝶子さんの場合は、そうはしなかった。
 
それが物語的な予定調和と言えばそれまでだが、蝶子さんの優しさ、と見る事も出来る。
 
むしろ部長の余りにも真剣な想いを目の当たりにし、逆に心を打たれてしまった…という感情に近いだろうか。
 
30年連れ添った完璧とも言える旦那が、年若い男性の部下に真剣に恋をする…
 
それを、しかも告白の瞬間(しかも夫はフられる)まで見てしまった事も、彼女の心に大きな変革…というか決断をさせるに至る要因になったのだろう。
 
まぁ…とは言え、私なら例えそうであってもやはり別れたくは無いと思う…が、そこは世の奥様方に逆に問いたい所ではある。
 
恐らく部長の事だから慰謝料等々の問題も完璧に近いレベルで対応してくれたであろう事は想像に容易い。
 
それら、即物的ではあるが物理的な問題をきちんと処理して貰えるのであれば、最悪、別れも決断するかもしれない。
 
まぁこれは結局、蝶子さんという一人の人の出した結論なので、今更どうこう言える問題でもないのだが。
 
件の不倫相手「はるたん」が男だった事を知った蝶子は初めこそ春田を訴える構えを見せたが、部長の真摯な想いを見るにつけ、次第にその想いを緩めていく。
というより、緩めざるを得なくなった、という所だろうか。
 
それにしても恐ろしく物分りが良い、滅茶苦茶良き妻、かつ女性である。
 
その後は結局離婚を承諾、更に元夫の恋愛に積極的に計画を立てたりと応援する立場に回るが、彼女はやはり離婚したとは言え部長の事が好きだった
 
その為「わんだほう」でマロに対し思わず本音を語り、そこに漬け込む様な形でマロは蝶子を抱き締めるが、これもひとえに「人を好きになるということ」という本作のテーマに通じる。
 
別れたとは言え、早々想いまで捨て切る事は出来ない。当然である。
 
そうした意味で蝶子さんというキャラクターも非常に真面目に人を好きになるということ」について向き合ったキーパーソンの一人だった。
 
離婚後、マロとの逢瀬がなし崩し的に重なり、最後は何だかんだ言いつつマロとの未来が見える様な展開で蝶子さんの物語は一応の落ち着きを見せる。
 
「夫が男に惚れた事で離婚を切り出してきた」
そんな現代的でセンセーショナル、かつ困難な問題に直面する当事者を好演した大塚寧々の演技力はやはり他の演者同様、並外れたものだった。
 
そして実際の大塚寧々の年齢は49歳。
綺麗すぎだろ…大塚寧々…という驚きを同時に隠し切れずにいる。
 

◼栗林歌麻呂(くりばやし うたまろ)

 
・問題ありまくりな天空不動産で、ある意味最もリベラルで自由な発想の持ち主
 

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栗林歌麻呂、通称マロ※以下マロ)
 
凄いネーミングセンスだが、本作における名付けのテーマというか関連性は主に武蔵歌麻呂政宗、などを見ればある種の法則に基いている事がわかる。
 
名前に関する考察…というより私見、個人的に思う所はあるが、それは後述する事にする。
 
 
彼はこの問題ありな天空不動産営業所内において唯一(男性)主要登場人物としては最後まで異性愛者ストレートの属性を崩さなかった人物である。
女好きでお調子者、ゆとり(さとり)世代特有のノリの軽さも相まって、所内では問題視される部分も多々あるが、彼は彼でそれでも自分なりに」自己主張をきちんとする事の出来る、非常にハッキリとしたキャラクターとして終始描かれている。
 
そして特筆すべきは彼の順応性の高さだ。
 
春田は5話で牧から「付き合って下さい」と言われ、不承不承ながら付き合う事を了承する。
 
その後牧とデートしたり、牧の実家へ行ったりと急展開で事が進んでいく。
 
牧としては春田を試したかった部分が強かったのだろうが、牧の実家で散々な目にあっても尚、春田は「いいって。牧の家族ともっと仲良くしていきたいし」と、非常に牧との交際」に対し前向きな姿勢を見せる。
 
その後ちづに呼び出された春田は牧と交際関係にある事をちづに告げる。
 
「今初めて人に言ったわー!」
 
と春田が言うシーンだが、ここは恐らく5話の副題にもなっている「Can you "Coming Out" ?」の意味が示す通り、春田が自身の現在の状況(つまり男性と付き合っている=同性愛)を「カミングアウトする」という意味を持つのだろう。
(5話はこのシーンに限らず総じてカミングアウトが主題になっており、芸能人の交際発表、春田のちづに対する交際宣言、また後続する職場でのカミングアウト、にも一連の流れとして通じている)
 
それは春田がカミングアウトしたあと思わずへたり込む描写からも見て取れる。
 
裏を返せばこれは明確に「春田の前進」「春田の決意の表れ」とも呼べる重要なシーンである。
 
春田のカミングアウトを受けたちづは、マロの春田さんみたいな超絶鈍感な人にはどストレートに言わないと一生伝わんないっすよ」
という助言を受け、春田へ告白するつもりでいたが動揺し、思わず聞く。
(※その直前、カフェでちづとマロのデートシーンが挿入されるが、そこで象徴的なのは男子であるマロはインスタ写真を撮り、ちづはインスタ自体「やっていない」というのも既存の男女規範的に対するアンチテーゼ、暗喩的な意味合いを感じなくもない)
 
「そうなんだ…。良かったじゃん!」
「春田も…好きなの?」
 
それに対し春田は
 
「俺は…まぁ、うん」
と照れ臭そうに笑う。
 
この際の演出がこれまた何年代のトレンディドラマなのという程ベタベタな演出なのだが、この返答に被る様にちづが砂に描いた相合傘がスローモーションで波にさらわれて消える
 
これはOLのメインテーマのひとつに「90年代(80年代?)ドラマのリバイバル」という意味合いが込められている、という見方も出来るし、何より本作がそういう方向性で作られている事は見ていて明らかである。
にしてもベタだが。
 
更に言えば、ほぼこの時点でもう春田の想いは牧と同様、つまり両思いの関係にあった事も明確で、牧の
 
「俺は春田さんにとって恥ずかしい存在なんですか」
 
という問いや芸能人カップルに牧が春田と交際関係にある事を告げる姿などを見た春田は、その問いや行動に対する返答として
 
俺にとって牧と一緒にいることは全然恥ずかしい事じゃないから」
 
と、自分が不本意に牧を傷付けた事を理解、反芻した末、牧に対する愛情を明確に口にする。
ここへ来ていやに唐突な破格の急成長ぶりである。
 
こうなった以上、もうどう考えても愛情一本牧春(牧)END突入待った無しという感じなのだが、続く6話で色々とメンタルにダメージを負った牧は病んだ挙句彼自身の不安から春田を遠ざけ別れを切り出す…という非常に切ない闇落ちルートに自ら突入してしまう。
 
滅茶苦茶に押してみたと思いきや凹んで家を出て行こうとしてみたり、引いてみたりするこの辺の駆け引きの妙が男心を掴んで離さないのだろうか。
「魔性の本質とは翻弄である。」というモテテクを体現した牧は事実、消えない傷を春田の心に残し去っていく事になる。
 
話をマロに戻そう。
 
マロは冒頭で語った様に、ふわふわしていながら、それでいて非常に順応性の高いキャラクターである。
 
春田が牧との交際を真剣に考え、職場で牧と付き合っている事をカミングアウトした所、マロは引くでも中傷するでもなくそういうの俺すげぇ新しいと思います!」とペラッペラではあるが(笑)、すんなりと肯定的な態度で祝福する。
 
牧が逆に交際宣言を否定してしまった事で「春田の片思い」と職場の人間に勘違いされてしまう事になるが、その後マロは春田と二人きりになった際、自身が今蝶子さんに入れ込んでいる(惚れた)、という事を告げる。
 
それに対し更に「ハードルの高い恋愛って燃えるけど!ムズいっすよね…!」と何ともポジティブだ。
 
そして春田に対しても「人を好きになるのに、歳も性別も関係ないじゃ無いっすか」と言ってのける。
 
この恐ろしいまでの物分りの良さや能天気さ、ポジティブさが、マロが完全に職場内で嫌煙されない部分なのだろう。
 
その後もマロは傷心の蝶子に対し遠慮なくアプローチし続ける。
 
初めこそ煙たがっていた蝶子だが、次第にマロの真摯さに心を許し始める。
 
最終話では二人の明るい未来が見える様な描写もあり、恐らく二人は年の差を越えてお付き合いを始めるのだろう。
 
そうした意味では道化的な役回りであったマロもきちんと人を好きになるということ」のテーマに沿って考え、行動していたキャラクターなのである。
 
またマロは勘違いが招いた結果であるものの、唯一物語の中で春田母を除き春田を「下の名前」で呼んだキャラでもある。
 
色んな意味で、OLという作品にとって決して必須では無いが絶対に「必要」なキャラだった。
それが栗林歌麻呂こと、マロというキャラクターである。
 
 
 
 
以上が取り敢えず駆け足ですが主要登場人物の紹介✖雑感まとめです。
 
他にもマイマイであったりアンジャ児島演じるちづの兄、鉄平(※本名鉄夫)など魅力的でコミカルな濃いキャラクターも登場しますが、当面の所一旦キャラ紹介はここで終わりにします。
 
以下は名前に関する考察、というより雑文です。
 
お暇な方はお付き合い下さい。
 
 
 

OL登場人物の名前のもつ意味に関する考察

 

 

 

・黒澤武蔵

 
黒澤武蔵武蔵は恐らく宮本武蔵から拝借したものと思われる。
 
宮本武蔵は剣豪であり、また「二刀流」で有名である。
これをOLに置き換えた場合、部長の「二刀流」が何を示すかは敢えて説明を省く。
余談だが一話で春田が搬送された病院名は「巌流総合病院」である。
(※宮本武蔵と彼の宿敵、佐々木小次郎は巌流島という島で決闘を行ったという逸話がある)
 
 

・武川正宗

 
武川政宗政宗は恐らく独眼竜で有名な「伊達政宗」から拝借したものだろう。
この時代「衆道」と呼ばれる所謂「同性愛」が当たり前に行われていた事は歴史的に有名な事実である。
 

yukarino.jp

 中でも伊達政宗は特に小姓に入れ込んでおり、特に「片倉小十郎」に対する情の深さは相当なものだったと伝え聞く。

この辺の史実をモチーフにした戦国系のBLは非常に多い。
そういう意味では武川に通じるものがあると言える(最も、この時代は伊達政宗を除いても衆道が横行していた訳で、何も正宗公に限った話でも無いと言えばそれまでなのだが)。
 
 

・栗林歌麻呂

 
そして栗林歌麻呂彼の名付けの元になったキャラクターは稀代の浮世絵師、喜多川歌麿から着想を得ているのではないだろうか。
 

 ・参考サイト「WEDGE Infinity」「ひととき」より

wedge.ismedia.jp

 

彼は美人画、春画を書き続けた女好きの代名詞とも言える人物で、更に彼は美人画の中で明確に「人妻」を描いた作品を発表している。
正直マロについては果たして喜多川歌麿であったかどうか定かではないが、当たらずとも遠からず、可能性として無くは無いように思う。
 
春田創一牧遼太についても定かでは無いが、まず春田創一に関してはある程度の予想はつく。
 
 

・春田創一

 
まず季節としての「春」
これは牧との出会いが桜の下(前)、であったこと、そして春田という人柄を示す意味としての「春」なのではないかと思う。
「創一」については「創」という字に注目したい。
 
 
「創」については以下のような意味がある
 

 ・参考サイト「一期一名」より

ichigoichina.jp

画数 12画
音読 ソウ
訓読 きず、つく(る)、はじ(める)
名乗り はじむ、はじめ、ゾウ
意味

1. 傷つける。傷つく
2. 切り傷
3. 作る。初めて事を起こす
4. 始め

由来/
成り立ち
「創」は「刂(りっとう)」が刃物を表し、材木を切って「倉」を建てる様子を表現している。
 
 
サイト内から引用すると
 

「創」は漢字がもつ「想像力豊かな様子」「独創的、個性的な様子」をすぐに想起できますね。他にも「始める」の意味からは、新たに何かに取り組む「積極性」「一歩を踏み出す力強さ」などをイメージできます。

 

 
という「春田」という人物を一言で表した様な漢字である事がよく分かる。
 
また「創」「きず」とも読み、「傷付ける、傷付く」そして作る。物事を起こす。」という意味を持つ。
二律背反とも言えるこの漢字一字が持つ意味は、そのまま春田という人間を表すどころか、春田本人であるとすら思える。
 
「傷ついて、傷つけて、一から始めていく」
 
そうした意味を持つキャラクターであるという事が、春田の名付けから見られないだろうか。
 
 

・牧凌太

 
 
そして「牧凌太」である。
 
一見無作為な法則の様に思うが、彼の名前に含まれる「凌」という漢字に注目したい。
 
「凌」が示す文字の意味は以下だ。
 
 

  ・参考サイト「一期一名」より

ichigoichina.jp

 
画数 10画
音読 リョウ
訓読 しの(ぐ)
名乗り しのぎ、しのぐ
意味

1. しのぐ。おしのける
2. 越える
3. いりまじる
4. 氷

由来/
成り立ち
「にすい」が氷を表し、「夌(りょう)」は丘を表す。「丘を登るように凍っていく様子」の意味が生まれた。
説明の
仕方
凌駕の凌
 
 
 
注目したいのは「夌」「丘」を表し、他にも「越える」「しのぐ、おしのける」という意味をもつ点だ。
 
以下サイト内の引用である
 

「凌」の由来にはいくつか説がありますが、ヘンの「にすい」を表し、「夌」を表すことで、「丘を登るように凍っていく様子」を表現しているといわれます。そして、氷が丘を乗り越える様子から転じて、「越える」という意味をもつようになり、さらには「しのぐ、おしのける」という意欲が盛んな意味を表すようになりました。
「他をしのいで、さらに上に出る」「他よりまさった状態になる」などを意味する「凌駕(りょうが)」という言葉にも使われるとても力強い漢字です。

 

 
彼は好意的な場合でも拒絶的な場合にも非常に強いエネルギ―を他者(特に春田)へ向ける。
 
またサイト内の引用で以下の記述がある。
 

「凌」の意味を考えると「力強さ」「たくましさ」といったイメージが想起されるので、「困難にぶつかっても乗り越えられる子に育ってほしい」「愚直に努力できる子になってほしい」といった想いを込めることができそうですね。また、努力をして「人の上に立つ子になってほしい」など、自分の道を切り拓いていけるような姿を願えますね。
「高い地位に上りつめようとする気高い志」のことを「凌雲の志」といい、この言葉をまさに体現してくれそうです。

 

 
やはりいずれも「困難」「(乗り)越える」というイメージが強い。
 
これは二人の距離感や超えられない壁(性別)に置き換えて考える事も出来、そういう意味ではとてもロマンチックな意味と言えるだろう。
 
結果的には春田が「傷つけて、傷つき」牧が「超えられない丘(障壁)」を乗り越え、最後に春田が「一から始めていく」
 
―――と、些かロマンチック過ぎるとも言えるが、そうストーリーと剥離した意味、解釈と言えなくもないと思うがどうだろう。
 
その辺は既に考察されている事だろうし、恐らく今後発売予定の公式本にも設定資料として記述されるのではないだろうか。
 
 
 

・荒井ちづ/鉄平(鉄夫)

 

荒井兄妹については名字の「荒井」に注目したい。
 
荒井とはあらい、カタカナ表記でアライ
そして英語表記にすると、セクシャルマイノリティを支援、応援する異性愛者、という意味をもつ「Ally(アライ)」となる。
正式名称はStraight ally(ストレート・アライ)」である。
 
語源はalliance「同盟」である。
アライアンスと言うと広義的には「同盟」という意味をもつが、アライアンスは主にビジネスシーンを中心に使用される事が多く、狭義には企業間同盟、というニュアンスが強い。
 
ここで言う「アライ」とは上述通り「性的少数者を支援(応援)する異性愛者」を指し、即ち「同盟」(を結ぶ人たちの意)である。
 
荒井の由来はここから来ているのではないだろうか。
 
荒井兄妹の営む居酒屋「わんだほう」は、幼少期より付き合いのあった春田が入り浸る店だった。
しかし物語が進むにつれ天空不動産メンバー御用達の居酒屋になっていく。
それ即ち、全話視聴済であればお分かりの事と思うが、牧を始めとする「天空不動産メンバー=性的少数者の象徴(※該当者一部)」そして荒井兄妹、またわんだほう自体が「性的少数者を受け入れる団体、サークル等の象徴」という図式である。
 
更にわんだほう(=荒井兄妹)は最終話では部長と春田の結婚式の祝賀会(前夜祭?)を開催するまでに至る。
 
前回のエントリ、ちづの項目でも触れたが、ちづは単にBL女子(※BLに頻出する女子の類型キャラ)以前に、彼女のスタンスはそういう意味では非常に「アライ」的であった。
 
兄の鉄平にしても、訪れる牧や部長、また春田の状況や相談についても非常に肯定的だ(※牧や部長は自身の属性を鉄平に知られている)。
 
鉄平は最終話で部長と春田の結婚について
「部長さんも、形が欲しかったのかもねぇ…」
と、驚くとか差別するとかいう以前にちづ同様一種異様なまでの物分りの良さを示す。
 
そういう部分でも取り分け荒井兄妹という二者は「アライ」の象徴という役割を最初から明確に定義づけられていたのでは無いかと思う。
 
いずれにしても、理想的な「ストレート・アライ」である。
 
 
―――――
 
全体を通すと長くなってしまいましたがざっと名前に関する考察、所見は以上です。
なるべく読まないようにはしている&自分の思った事を書きたいのでそのようにしていますが、度々目に入るOL考察班の皆さんの知見が凄すぎて正直「ウワー!!目からウロコ・・!!」という考察がざぶざぶ溢れていて自分の陳腐な考察が恥ずかしくなります。
 
殆ど語るべき事は語ってしまったんですが、次回下編では熱の冷めぬ内にざっくり総括記事としてアップ出来るといいなと思ってます。
 
お付き合い頂きありがとうございました。
そして再度
 
OLヒットおめでとう!!
 
 
 
(以上「おっさんずラブとは何だったのか(中)」終わり。下編へ続く)
 

 

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